「タイミング悪っ」

夕刻のカフェにて。3人掛けのテーブルで女子大生2人がお喋りしている。

女子A

「遊園地、楽しかったねー」

女子B

「ねー」

女子A

「何が一番良かった? 私メリーゴーランド」

女子B

「ホントぉ? お化け屋敷じゃなくって?」

女子A

「ちょっとやめてよ、思い出しちゃうじゃない」

女子B

「あはは、メンゴメンゴー」

水を飲む女子B。

女子A、ハンドバックの中の化粧ポーチをいじり店の奥をちらっと見る。たった一つのトイレはまだ使用中で、鍵が掛かっている。

女子A

(お化粧、早く直したいんだけどな)

女子A、口元のマスクをつまんでちょっと引き上げる。

女子B

「あーあ、マジ楽しかったなー。絶対また来よーね、3人で」

女子A

「うん!」

カチリ、と音を立ててトイレの鍵が回る。扉が開いて中から人が出て来た。

瞬時に腰を浮かせる女子A。

女子A

(よし、今だ)

男子C

「ごめーん、タンドリーチキンサンドもうないって!」

カウンターの方から、男子Cがこちらに呼び掛けてくる。

男子C

「ついさっき、売り切れたんだってー」

女子A

「そ、そうなのねー」

近くのテーブルの客が、ハンカチを片手に席を立った。

男子C

「ローストビーフのピタパンか、エビのカルツォーネだったらできるんだって! どうするー?」

客がトイレに入り、再び鍵が掛かった。

女子A

「・・・ピタパンにする」

男子C

「オッケー」

女子A

「ありがと・・・」

女子A、言葉を飲み込み椅子に腰を落とした。

バイト君

「出来上がりましたら右側からお渡ししますので、少々お待ちください。合計1500円になります」

男子C

「はーい。・・・お前、ここで働いてんだな。様になってんじゃん」

バイト君

「まだまだっすよ。先輩こそなんすか。女子を2人も連れてお出かけっすか」

男子C

「まぁな」

男子C、カフェのギフト券を手渡す。

バイト君

「いつもご利用ありがとうご・・・あ、申し訳ございません。こちら、有効期限が先月までとなっております」

男子C

「なら、しょうがないな」

男子C、スマートな動作で財布からクレジットカードを取り出す。

バイト君

「かっけー・・・」

女子B

「えっごめん、ギフト使えなかった?」

女子B、カウンターまでやって来て男子Cの手からギフト券を取る。

女子B

「あーホントだ終わってる。折角福袋でゲットしたのに、勿体ないことしたぁ。処分しといてもらえます?」

バイト君

「かしこまりました・・・」

女子B

「ほんっと勿体ないわー。やっぱこういうのって、もらってすぐに使わなきゃだめだよね」

男子C

「そうだね・・・」

バイト君、上目遣いで男子Cを見る。男子C、言葉を飲み込んで右へずれる。

男子C、食べ物飲み物を乗せたトレーを持ってテーブルへと向かう。

女子Aの席は空いている。

女子B

「お手洗い行ったよ。先食べてって言ってた」

男子C

「あ、そう。まあ待とうか」

女子B、テーブルに頬杖をついて首をこてんと倒し、男子Cの顔をのぞき込む。

女子B

「今日、最高だったね!」

男子C

「ホントにねー」

女子B

「ジェットコースター、リニューアルされてめちゃめちゃ迫力上がってたよね!」

男子C

「ね。時間があれば、もう一回乗りたかったな。あ、てか大丈夫? 最後の方、時間押してたけどちゃんとお土産見れた?」

女子B

「ノープロブレム! 一番欲しかったの買えたし!」

男子C

「えーなになにー?」

女子B

「おっ見たい見たい~?」

女子A

「ごめーん、待っててくれたのー?」

女子A、テーブルに歩いてくる。

女子A

「先食べててくれてよかったのに。あつあつシチューパイ、冷めちゃうじゃん」

男子C

「全然いーいー。じゃ、みんな揃ったことだし食べよう!」

女子B

「そーね、まずは乾杯しよっか!」

女子Bは言葉を飲み込んだ。ピンクと青の、ペア物のキーホルダーをカバンに戻しながら。

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